第569章 心の奥深くに突き刺さる

彼女が振り向いた瞬間、耳をつんざくブレーキ音が響き、車が稲妻のような速さで彼女の方向に向かって突っ走ってきた。

水野日幸が反応する間もなく、車は見事なドリフトを決め、彼女の横をかすめて通り過ぎ、再びブレーキ音を立てながら、彼女の前にぴたりと停止した。

その瞬間、彼女は誰かに腰を掴まれ、その人の腕の中に引き寄せられた。

水野日幸は目を丸くした。この運転技術は、まさに凄いの一言だった。安定感があり、スピーディーで、極めて高度な技術レベル。この一手だけでもプロレベルに達していて、間違いなく出雲さんではないことは確かだった。

出雲さんは去年やっと免許を取得したばかりで、安全運転を心がけ、スピードを求めることはなく、このような高度な運転はできるはずがなかった。

車が停止し、ドアが開き、誰かが出てきた。出雲絹代ではなく、江川歌見だった。彼女は眉を上げ、水野日幸の後ろの車椅子に座っている長谷川深を上から下まで観察し、尋ねた。「あなた、誰？」