その夜、出雲絹代は眠りにつくまでにどれほどの時間がかかったのかわからなかった。あれこれと考えているうちに、思いは別の方向へと向かい、水野日幸を養子に迎えてからの日々を思い返していた。赤ちゃんの頃のよちよち歩き、初めての言葉、そして成長していく様子を。
子供の成長を見守ることほど感動的で、達成感のあることはない。しかも、我が娘はこんなにも優秀だ。
誰の実の娘であろうと、彼女は永遠に自分と水野の娘であり、掌の上で大切に育てた宝物なのだ。
藤田清義は一度だけ尋ねてきただけで、その後は一切連絡してこなかった。出雲絹代も新シーズンのファッションショーの準備に忙しくなり、次第に余計な心配は頭から消えていった。
夏休みも、忙しさの中であっという間に過ぎ去った。
水野日幸は大学一年生になり、八月二十三日に入学手続きをし、その後半月間の新入生軍事訓練が待っていた。
入学の二日前、八月二十日は、出雲七先生の新ドラマのオーディションの日だった。芸能界やネット上では大きな話題となり、俳優たち、ファンたち、視聴者たちは、この日の到来を首を長くして待っていた。
出雲七先生の新作は、今に至るまで脚本の一文字も漏れておらず、どんなジャンルの作品なのかさえ誰も知らなかった。
芸能界で、彼女以外にこんなことができる脚本家は絶対にいない。他の誰かがこんなことをすれば、とっくに非難の嵐に見舞われ、傲慢だと批判されていただろう。
他の脚本家なら、俳優たちは誰も出演を引き受けないだろう。今の芸能界の俳優たちは、誰もが持て囃されているのだ。一線級二線級の俳優はおろか、三流の俳優でさえ、脚本も見せずに誘うなんて、誰がそんな話に乗るものか。
しかし出雲七先生は違う。テレビドラマ史上最高の視聴率を記録し、一本のドラマで無名だった俳優たちを大スターに押し上げ、トップクラスの俳優を三人も生み出した。彼女は見せかけではなく、本物の実力者なのだ。
現在のテレビドラマ界で、彼女は脚本の質と視聴率の保証人なのだ。
視聴者たちはこの神秘的な展開に大きな期待を寄せていた。出雲七先生が下半期に新作を撮影するという噂が流れた時から議論が始まり、オーディションが近づくにつれ、毎日のようにトレンド入りしていた。