上條千秋は息子を見つめた。「大丈夫かしら?」
彼女は、このような出会いと擦れ違いを何度経験したことだろう。一度また一度の希望と失望。それでも毎回、なりふり構わず確かめずにはいられなかった。
藤田清明は頷いた。母を失望させたくなかったが、断る勇気もなかった。毎回同じことの繰り返しで、一度も見つからなかった。自分のことはどうでもよかったが、ただ母が傷つくのが怖かった。
「藤田奥様、日幸さんとこのカフェでお待ちください。私と藤田坊ちゃんで探してきます」大豆田秋白は隣のカフェを指さした。
上條千秋は首を振り、彼を見つめた。「私も一緒に行くわ。日幸をここで待たせましょう」
水野日幸は遠慮した。「私も一緒に行きます」
こんなことが起きた以上、観光を続けるわけにはいかず、一行は人探しに向かった。