第648章 人の心は貪欲なもの

「うん」石田文乃も力強くうなずいた。

村田思はすでに皆を呼んで歌を歌い始めていた。彼女が先導し、誕生日の歌が小さなリビングに響き渡り、幸せと喜び、温かさ、そして最も誠実な祝福に満ちていた。

皆が歌い終わると、水野日幸は皆でろうそくを吹き消すように促した。

この誕生日は、彼女にとって最も特別で、最も幸せで感動的な誕生日だった。彼女の友人、家族、恋人、彼女が大切に思うすべての人がここにいた。目を閉じ、ろうそくを吹き消し、静かに願い事をした。

長谷川深は少し横を向き、ろうそくの光の中で笑みを浮かべる少女の美しい顔を見つめた。ろうそくが消えた後も、彼女は幸せに満ちた明るい笑顔を浮かべていた。温かい感覚が体中に広がり、幸せが心の底から溢れ出ていた。

彼女に出会う前、彼が生きる唯一の動機は、彼女を見つけ、彼女が幸せに生きているのを見届け、自分の持っているものすべてを彼女に贈り、彼女の生活を邪魔しないことだった。