第55章 青春の季節、時は止まらず(3)

その女の子が去った後、保健室は再び静かになった。鈴木和香は自分でもどこからそんな勇気が出たのか分からなかったが、ようやく何日も悩んでいた質問を口にした。「あの子、季雄くんの彼女なの?」

その質問を口にした後、鈴木和香は自分の舌を噛みそうになった。来栖季雄は彼女のことを詮索好きな女の子だと思うのではないだろうか?

鈴木和香は不安げにまぶたを上げ、こっそりと来栖季雄の表情を窺った。男子はその質問を聞いて、眉間を少しだけ寄せ、本から顔を上げて彼女を一瞥し、淡々とした口調で二文字だけ言った。「違う」

鈴木和香は「あぁ」と言って、頷いた。

来栖季雄は視線を再び本に戻した。

部屋は再び静かになり、しばらくして、来栖季雄の声が漂ってきた。「最近うちのクラスで行事があって、僕と彼女で担当することになってるんだ」

男子がそう言った時、表情は無表情で、ずっと本を見つめたままだった。

鈴木和香は布団に顔を埋め、こっそりと口元を緩め、目元も笑みで綻んだ。

鈴木和香は生理痛で耐えられなくなり、保健室の先生が鎮痛剤の注射をしてくれた。帰る前に支払いをしたが、合計560円で、鈴木和香がまだ財布からお金を取り出す前に、来栖季雄がポケットから千円札を取り出して保健室の先生に渡した。

鈴木和香は保健室を出て、少し考えてから来栖季雄の側に駆け寄り、財布を取り出して中を探り、千円札を取り出して来栖季雄に差し出した。「医療費、返すわ。ありがとう」

来栖季雄は鈴木和香が差し出した新しい千円札と、彼女の開いた財布の中の分厚い一万円札の束をちらりと見て、目元が少し暗くなった。そして顔を背け、鈴木和香のことなど全く気にせず、足早に歩き出し、鈴木和香との距離を大きく開けて去っていった。

鈴木和香が二度目に奮起して一生懸命勉強するようになったのは、あるバーベキューの時だった。椎名佳樹が野外バーベキューを企画し、多くのクラスメートを誘い、鈴木夏美と来栖季雄も参加していた。