第53章 青春の季節、時は止まらず(1)

少年は誰かに見られていることに気づいたようで、鈴木和香の方へ視線を向けた。ただ一瞬の、冷たく孤独な眼差しだった。和香は少年の容姿に魅了されていた状態から我に返った。しかし少年は彼女を空気のように扱い、何の感情も見せずに歩み去っていった。

鈴木和香は少年の背中が完全に見えなくなるまで待ってから、カバンを抱えてバス停へ向かった。ちょうどバスが到着し、カードを通して乗り込むと、窓際の席に座った。大雨に洗われた後の湿った街を眺めながら、軒下で雨宿りをしていた時の少年の顔が、目の前にちらついた。

中学三年生の学業は非常に忙しく、和香はすぐに問題集の海に没頭した。しかし、暇な時間ができると、頭の中にはいつもあの少年の顔が浮かんでいた。

しかし、中学卒業まで、彼女は学校でその少年に再び会うことはなかった。高校一年生の入学手続きの時、鈴木和香と鈴木夏美は新入生の中で椎名佳樹に出会い、そしてあの長い間記憶に残っていた少年にも出会った。

しかしその少年は、まるであの雨宿りの出来事をすっかり忘れているかのように、椎名佳樹が互いを紹介した時も、冷たく軽くうなずいただけで、一言も話さなかった。結局、椎名佳樹が彼の名前を教えてくれた。来栖季雄という。

来栖季雄……その夜、鈴木和香は机に向かい、学校から配られた高校一年生の教科書のカバーを付けながら、思わず紙にその三文字を書いていた。

その三文字は画数が多く、彼女はゆっくりと、丁寧に、一画一画、きちんと書いた。彼女の筆跡とともに、来栖季雄という名前は、静かに彼女の薄くて美しい青春の中に刻み込まれていった。

彼らの高校ではクラス分けは成績順で、椎名佳樹は成績が良く1組で来栖季雄と同じクラス、鈴木和香と鈴木夏美は成績が似たようなものだったので、二人とも3組だった。