夕食を済ませた後、来栖季雄はベッドに新しいシーツと布団カバーを取り替え、学校の寮に戻ろうとした。
しかし、鈴木和香は彼の手を引いて止めた。
来栖季雄は鈴木和香が怖がっているのだと思い、特に何も言わずに、パソコンの前に座ってそれを開いた。
鈴木和香はベッドで携帯をいじっていた。
部屋の中は静かで、デスクトップパソコンが動作する時のブーンという音だけが聞こえていた。
時間は早く過ぎ、あっという間に夜11時になった。来栖季雄は直接布団を敷いて床に横たわり、鈴木和香はベッドに横たわっていた。布団からは来栖季雄と同じ香りが漂い、彼女の心臓の鼓動は次第に早くなっていった。
その夜、時は静かに流れ、若い二人は一線を越えることなく、同じ部屋で静かに自分の想いを巡らせながら、お互いの寝息を聞きながら眠りについた。
その夜、真夜中に奈良は大雨が降り出し、外は雷鳴が轟いていたが、そんな荒れた天気の中でも、鈴木和香は夢の中で微笑んでいた。
翌日、鈴木和香は臨時の身分証明書を再発行し、来栖季雄は彼女の航空券を買い、自ら空港まで見送った。
セキュリティチェックを通る前、来栖季雄は財布から真っ赤な千円札を数枚取り出して鈴木和香の手に握らせ、普段は寡黙な彼が、気をつけて、東京に着いたら電話をくれと低い声で言い添えた。
あの時、二人の関係はとても良好で、どんどん親密になっていくように見えた。このまま進展していけば、自然な流れで二人は付き合うことになるはずだった。
でも、ほら、一夜にして、訳も分からず変わってしまった。
鈴木和香は東京に戻ると、すぐに全ての証明書を再発行し、それらが手に入るとすぐに大阪行きの航空券を予約し、鈴木夏美を連れて奈良に行った。いつものように来栖季雄に電話をかけた。
来栖季雄は大泉撮影所で撮影中で、来られないと言った。
彼女は大泉撮影所まで行けると言った。
来栖季雄は撮影がクローズドで、外部の人に会えないと言い続けた。
その時、彼女は深く考えず、ただ彼が本当に忙しいのだと思い、少し落ち込みながら鈴木夏美と奈良で二日間過ごして東京に戻った。
一ヶ月後、彼女は再び奈良に行ったが、来栖季雄は京都で撮影中だと言った。
さらに一ヶ月半後、彼女はまた奈良に行ったが、来栖季雄は相変わらず撮影を理由に彼女を断った。