第60章 青春の季節、時は止まらず(8)

鈴木和香は夢の中でここまで考えると、それ以上考えるのが怖くなり、涙がより激しく流れ出した。

あの一言は、まるで悪夢のようだった。

私が好きな人が誰であれ、とにかくあなたではありえない。

とにかく彼女ではありえない……

あの瞬間まで、中学1年、高校3年、大学4年と、彼女は8年間片思いを続けてきた。8年間変わらず一途に彼を愛し、彼のために頑張り、彼のために愚かなことをし、夢で彼を想い、昼間も彼のことを考え、世界中が彼で満ちていた。そして彼女が片思いしていた人は、彼女に告げた。好きな人が誰であれ、とにかく彼女ではありえないと。

彼女の片思いは、芽を出す前に、根を断ち切られてしまった。

それ以来、彼を愛することは、彼女一人の事となった。

最初は彼との出会いを避けることから始まり、最後には本当に会わなくなった。時々、椎名佳樹から彼の近況を聞くことがあり、彼が芸能界で華々しい活躍をしていることや、環映メディアを買収したこと、また帝王賞を受賞したことなどを知った……

実際、椎名佳樹が教えてくれなくても、彼女は知ることができただろう。なぜなら彼は全国的に有名で、彼に関するちょっとした動きでもヘッドラインになり、センセーションを巻き起こすのだから。

ほらの数年間、意識的に無意識的に彼を避けていても、彼女は依然として彼を見ることができた。街中に彼のポスターが貼られ、ショッピングモールには彼の広告写真が飾られていたから。

彼が自分を愛していないことは分かっていても、街で彼の写真を見るたびに、まるでバカのように立ち尽くし、記憶の中の彼と、今の彼がどう変わったのかを細かく観察してしまう。

ここまで考えると、鈴木和香は夢の中で思わず小さく啜り泣き始めた。

泣いているうちに、鈴木和香は夢から目を覚ました。

彼女は茫然と目を開け、見慣れた寝室を見つめ、しばらくぼんやりとしてから、こんなに長い夢を見ていたことに気付いた。枕は涙で濡れていた。

鈴木和香は壁の時計を見ると、すでに深夜12時を指していた。午後に帰宅して薬を飲んでから、今まで眠っていたのだった。

鈴木和香はベッドから降り、浴室で顔を洗い、薬を手に取って寝室を出て、階下に降りて、キッチンで水を一杯注いだ。