第60章 青春の季節、時は止まらず(8)

鈴木和香は夢の中でここまで考えると、それ以上考えるのが怖くなり、涙がより激しく流れ出した。

あの一言は、まるで悪夢のようだった。

私が好きな人が誰であれ、とにかくあなたではありえない。

とにかく彼女ではありえない……

あの瞬間まで、中学1年、高校3年、大学4年と、彼女は8年間片思いを続けてきた。8年間変わらず一途に彼を愛し、彼のために頑張り、彼のために愚かなことをし、夢で彼を想い、昼間も彼のことを考え、世界中が彼で満ちていた。そして彼女が片思いしていた人は、彼女に告げた。好きな人が誰であれ、とにかく彼女ではありえないと。

彼女の片思いは、芽を出す前に、根を断ち切られてしまった。

それ以来、彼を愛することは、彼女一人の事となった。

最初は彼との出会いを避けることから始まり、最後には本当に会わなくなった。時々、椎名佳樹から彼の近況を聞くことがあり、彼が芸能界で華々しい活躍をしていることや、環映メディアを買収したこと、また帝王賞を受賞したことなどを知った……