第58章 青春の季節、時は止まらず(6)

その頃、大阪から奈良までは既に新幹線が開通していて、たった1時間の道のりだったので、鈴木和香はよく大阪の鈴木夏美を訪ねては、大阪には何も面白いものがないという口実で奈良に行き、そして奈良に着くと、QQで親しい友達のような口調で、冗談めかして来栖季雄にメッセージを送るのだった。「私と夏美が奈良にいるんだけど、私たちを食事に誘ってくれないの?」

来栖季雄は一度も断ることなく、毎回彼女たちがどこに泊まっているのか尋ね、そして来て、食事に連れて行ってくれた。

大学4年間で、鈴木和香は東京から大阪までの航空券、大阪から奈良までの新幹線切符、そして奈良から東京までの航空券を分厚く積み重ねていた。

その束に何枚のチケットがあるかは、彼女が来栖季雄に何回会ったかを表している……

いや、違う。そのチケットから3枚を引いた数が、彼女が彼に会った回数なのだ。