鈴木和香が洗面を済ませ、バスルームから出てきた時、ちょうど来栖季雄が寝室のドアを開けて入ってきた。
バスルームのドアは寝室のドアのすぐ隣にあり、鈴木和香と来栖季雄は正面からぶつかりそうになった。鈴木和香の体が少し震え、思わず男性の顔を見上げようとしたが、勇気が出ず、結局うつむいたまま急いで寝室に入っていった。
来栖季雄は鈴木和香の後ろ姿を軽く見やり、手を伸ばしてバスルームのドアを開け、中に入った。
風邪を引いていた鈴木和香は全身が疲れ切っていた。ベッドの端まで歩くと、そのまま倒れ込み、目を閉じて眠りに落ちそうになった時、バスルームから水の音が聞こえてきて、来栖季雄がバスルームで身支度をしているということは、今夜はここに泊まるつもりなのだと急に気づいた。
鈴木和香は仕方なくベッドから這い上がり、クローゼットに行って大きなクマのぬいぐるみを抱えてきた。