第79章 あなたは本当に正直ですね(3)

鈴木和香は口元を緩めて微笑んだが、何も言わなかった。

夕食後、夜の撮影がない時は、撮影クルーのほとんどが下階のレクリエーションルームでカードゲームをしたり、カラオケを歌ったり、フィットネスをしたりして過ごすのが常だった。

鈴木和香は夕食時に、親しい若手俳優と夜8時にカードゲームをする約束をしていたので、夕食後、馬場萌子とホテルの裏手にある庭園を少し散歩してから、時間を見計らってレクリエーションルームへ向かった。

鈴木和香が到着した時、カードルームにはまだ全員が揃っていなかった。彼女は数人と少し話をした後、トイレに行きたくなり、部屋を出た。

レクリエーションルームのトイレは、とても優雅で美しい内装で、広々としたメイクアップスペースも併設されていた。

鈴木和香は空いている個室を適当に選んで入り、ドアを閉めてから数秒も経たないうちに、外から複数人の足音が聞こえてきた。

鈴木和香はちょうどトイレを済ませ、水を流そうとした時、外から明確に「来栖スターったら、ひどい言い方するわね」という声が聞こえてきた。

鈴木和香はその場で動きを止め、耳を澄ませて外の会話に聞き入った。

「そうよね、スターだからって偉そうにして、人をあまりにも軽視しすぎよ!」

「それに夏音姉は何もしてないのよ。みんな同じ個室でカラオケしてただけで、夏音姉は来栖スターが一人で隅っこに座って群れないでいるのを見かねて、親切に誘っただけなのに。あんな言い方するなんて、ひどすぎるわ!」

鈴木和香は林夏音の名前を聞いた途端、より一層興味を持ち、そのままトイレに座り直して盗み聞きを続けた。

「そうよ。『男に引っかかりたいなら、ナイトクラブにでも行けばいい。芸能界にいる必要なんてないでしょう』だなんて!」

「皮肉を言うだけならまだしも、部屋中の人の前で監督にまで厳しく言うなんて。『今後は俳優を選ぶ時はもっとまともな人を選んでください。品位を下げるような怪しげなホステスなんか起用しないでください』だなんて!」

「部屋には大勢の人がいて、外部の投資家も何人かいたのに、夏音姉をホステス呼ばわりするなんて、本当に人を見下げすぎよ。」