第105章 愛してはいけない深い愛(11)

だいたいあの頃から、彼はお金を稼ごうと必死になったのだろう。

先ほどラジオで男性アナウンサーが言っていたように、愛はお金では測れないが、お金がないと愛することもできない。自分をより良くするのは、ただ彼女をより良く愛するためだった。

しかも彼が愛した彼女は、普通の家庭の女の子ではなく、名門の家柄のお嬢様だった。

正直に言えば、彼は口べたで、クラスメートと遊びに行くのも好きではなかったが、椎名佳樹が毎回彼女を誘うので、彼は気が進まなくても一緒に行った。

実際、行ってみると良いことがあった。彼女が奈良で大学に行きたがっていることを知ったのだ。

奈良は広く、大学もたくさんある。彼女はどの大学とは言わなかったが、同じ大学でなくても同じ街にいられればいい。そう思って、大学入試の結果が出た後、彼は迷わず三つの志望校すべてを奈良の大学にした。