来栖季雄は頷いたが、何も言わなかった。そして、車のラジオから次の曲に切り替わった。
この曲が流れ始めるとすぐに、鈴木和香はそれがさらに古い曲だと気づいた。玉置浩二の『ラブレター』だった。彼女はこの曲に特別な思い入れはなかったが、この曲名が頭に浮かんだ時、先ほどの曲の歌詞と相まって、鈴木和香は自分もかつてラブレターを書いたことがあったことを思い出した。
ラブレターというものは、高校時代のものだろう。男子が女子を追いかけるにしても、女子が男子に告白するにしても、みんなピンク色の便箋に書いて、好きな人に誰かを通じて渡したり、放課後、クラスメイトが全員帰るのを待って、密かに想い人の机の引き出しに入れたりするものだ。
でも鈴木和香のラブレターは、高校時代のものではなかった。