第155章 私の質問に答えて(7)

「同意する」来栖季雄は一切の躊躇もなく、率直に答えた。

「来栖大スター、環映メディアの株式10パーセントが何を意味するのか、分かっているの?環映メディアの株主として、今後の環映メディアの作品に対して発言権を持つことになるわ。本当にいいの?」松本雫は余裕たっぷりに尋ねた。

「ああ」来栖季雄は相変わらず少しの迷いもなかった。

「それに、あなたは環映メディアの株式の55パーセントしか持っていないのよ。もし10パーセントを私に売ったら、環映メディアの会長が変わる可能性もあるわ。これはあなたが何年もかけて築き上げた基盤なのに、もう一度考え直さないの?」

来栖季雄は眉間にしわを寄せ、松本雫がうるさく感じたようだ。「余計なことを言い過ぎだ。一言で言えば、同意するのかしないのか、それだけだ!」

松本雫は今度こそ来栖季雄のまばたきひとつしない潔さに一瞬戸惑い、しばらくしてから水筒を持ち上げ、もう一口水を飲んでから、いつもの冗談めかした調子を消して話し始めた。「来栖季雄、私の記憶の中で、私たちが知り合って以来、あなたはこの業界に入ってから今まで、誰にも助けを求めたことがなかったわ」

来栖季雄は黙ったままだった。

松本雫は俯いて笑った。「覚えているわ、初めてあなたに会った時、炭鉱王があなたを囲いものにしようとして、あなたが断ったら、投資家という立場を利用して、ひどく意地悪をしたわね。撮影の時、スタントを使うはずだったのに、あの用心棒たちは手加減なしで殴って、あなたは一ヶ月半も寝込むことになった。それでもあなたから見えたのは気高さだけだった。私はずっと考えていたの、こんなに誇り高い人が、一体何があれば頭を下げるのかって。まさか、彼女のためなら何でも捨てられて、自分から人に助けを求めて、ここまで大きくした環映メディアさえ手放せるなんて。来栖季雄、私には分からなかったわ、こんなに冷血な人が、熱くなるとこんなに壮大になれるなんて……」

心の内を見透かされた来栖季雄は、少し気まずそうな表情を浮かべ、緊張した声で言った。「松本雫、お前は本当によく喋る」

そう言って、来栖季雄は車のドアを開けようとした。