第165章 いつかは報いが来る(7)

来栖季雄は急いでエレベーターの前に歩み寄り、何度もボタンを強く押した。1階から徐々に上がっていく赤い数字を見つめながら焦りを感じていた。ついに数字が4階で止まると、季雄は苛立たしげに手を上げて再びエレベーターのボタンを数回押し、そのまま階段へと向かった。

-

鈴木和香は林夏音に言いたいことをすべて伝え終え、落ち着いた様子で撮影現場に戻ってきた時、ちょうど監督が与えた10分の休憩時間が終わり、2回目の撮影が始まった。

松本雫は1回目の撮影と同様、最高の状態を保っていた。一方、鈴木和香は気持ちを吐き出せたせいか、気分が良くなっていたようで、演技は1回目よりもさらに自然で完璧なものとなっていた。

監督はモニターに映る二人を見て満足げに頷き、遠くにいる林夏音に合図を送り、登場を促した。

しかし林夏音は何を考えているのか、監督の合図に全く反応を示さなかった。

監督は眉をひそめ、再び林夏音に合図を送ったが、彼女は相変わらず無反応のままだった。最後は彼女の隣に立っていたマネージャーが、少し焦った様子で手を伸ばして彼女を軽く押し、ようやく我に返った彼女は撮影現場に歩み寄った。

林夏音の調子は良くなさそうだったが、大きな失態はなかった。ただ、三人の女性が対峙するシーンで、林夏音は1回目と同様、鈴木和香に敵意のこもった目つきを向けてしまった。

「カット!カット!カット!」監督は続けて三回カットをかけ、マイクを持ったまま容赦なく林夏音に向かって大声で叫んだ。「林夏音さん、一体どうしたんですか?同じ間違いを二回も続けて?さっきも言ったでしょう、にらむべきは松本雫さんです。松本雫さんですよ!彼女があなたのライバルなんです。鈴木和香さんじゃありません。彼女とはそんな深い恨みなんてないはずでしょう!」

こんな簡単なシーンを二回も続けてNGを出してしまい、監督の怒りは収まらず、言葉遣いも厳しくなっていた。

林夏音は叱責に狼狽えながらも、自分が原因なので反論もできず、顔を赤らめて困惑した様子で謝り続けた。「申し訳ありません、本当に申し訳ありません、監督。」

監督は今回、林夏音の謝罪を全く取り合わず、手を振ってスタッフに小道具の再セッティングを指示した。

三人のメイクは崩れていないように見えたが、メイクアーティストが駆け寄って念入りにチェックを行った。