第197章 なぜ私じゃないの？（7）

千代田おばさんは既に朝食の準備を済ませており、鈴木和香が階段を駆け降りてくるのを見ると、すぐに磁器を拭く手を止めて、笑顔で尋ねました。「奥様、朝食をお召し上がりになりますか？」

鈴木和香は首を振り、玄関に向かいながら、靴を履き替えつつ、何かを思い出したように顔を上げ、千代田おばさんに尋ねました。「来栖社長は朝何時に出かけましたか？」

千代田おばさん：「その時は私も起きたばかりで、まだ6時前でしたよ。」

鈴木和香は軽く頷き、さらに尋ねました。「それで、彼は何か様子がおかしかったりしませんでしたか？」

千代田おばさんは少し考えてから言いました。「特におかしなところはありませんでしたが...来栖社長の顔色があまり良くなくて、唇が少し白かったですね。」

鈴木和香は手を軽く曲げ、唇を噛みしめ、何も言いませんでした。

千代田おばさんは少し待ってから、尋ねました。「奥様、何かあったのですか？」

鈴木和香は首を振り、千代田おばさんに微笑みかけて、ドアを開けて出て行きました。

馬場萌子は既に車で別荘の門前で待っていました。鈴木和香が車のドアを開けて乗り込むと、馬場萌子は車を発進させながら、こんな遅くまで寝ていたことをぶつぶつと文句を言い始めました。そして文句の途中で、鈴木和香の襟元に赤いキスマークが一杯ついているのを見つけ、「ツツツ」と舌打ちをして言いました。「なるほど、遅くまで寝ていたわけだ。昨夜は度が過ぎたようね！」

鈴木和香は頭の中がシーツと手についた血のことでいっぱいで、馬場萌子の冗談に応える気分ではなく、ただ手を上げて襟元を直し、窓の外を見つめました。

「どうしたの？機嫌が悪そうだけど？」馬場萌子は鈴木和香を一瞥して尋ねました。

鈴木和香はまだ黙ったままで、馬場萌子もそれ以上は何も言わず、カーステレオをつけました。

市内の道路は少し渋滞していて、走っては止まりの繰り返しでした。やっと高速道路に乗りかけたとき、鈴木和香は24時間営業の薬局を見つけ、急いで声を上げました。「止めて。」

「どうしたの？」馬場萌子は驚いて、すぐにブレーキを踏みました。

鈴木和香は自分のバッグを手に取り、「薬局に行ってきます。」

「薬局？どこか具合が悪いの？」馬場萌子は心配そうな声で尋ねました。