第208章 彼女をずっと好きでいられるのか?(8)

来栖季雄は画面をさっと見やると、そこには自分と松本雫がキスをしているシーンが映っていた。彼は思わず鈴木和香の方を振り向いた。すると、彼が席を立つ前よりもさらに真剣な表情で、少女はテレビに釘付けになっていた。

来栖季雄は鈴木和香をしばらく見つめた後、視線をテレビに戻した。大画面には、彼と松本雫が全身全霊を込めて情熱的にキスをしているシーンが映し出されていた。

芸能界にいる者なら誰でも知っているように、これらは全て演技であり、観客のために作られた虚像に過ぎない。しかも芸能界には既婚者の芸能人も多く、自分の配偶者が相手役と本当にキスをする場面を目の当たりにすることもある。ましてや、これは錯覚撮影なのだから、気にすることなど何もないはずだった。

以前なら、来栖季雄は映画館で自分が他の女性とキスをするシーンを見ても何とも思わなかった。しかし今、鈴木和香が食い入るように見つめている様子に、なぜか心の奥で不安が募っていた。

来栖季雄は鈴木和香の邪魔をせず、ゆっくりとソファに腰を下ろし、ノートパソコンのパスワードを入力した。最後の書類処理を済ませようとしたが、やはり頭を上げて、まだ続いているキスシーンを一瞥し、指先でパソコンの画面を軽くなぞりながら、淡々とした口調で尋ねた。「面白いか?」

鈴木和香は首を回し、不思議そうに来栖季雄を見た。

来栖季雄は何も言わず、無表情でノートパソコンのタッチパッドを二回タップし、手を上げて顎を指さし、しばらくパソコンの画面を見つめた後、手を下ろしてキーボードを叩き始めた。

鈴木和香は目を瞬かせ、来栖季雄の言葉が自分に向けられたものではないと思い、再び映画に目を向けようとした。しかし画面に視線が届く前に、隣の男性から感情のない声が再び漂ってきた。「映画の中のあれは全部錯覚撮影だ。何が面白いんだ」

ああ、彼は自分と松本雫のキスシーンのことを聞いていたのか……鈴木和香は画面をもう一度じっと見つめてから答えた。「錯覚撮影だとしても、季雄さんと雫姉は顔値が高いし、この雪が舞う情景と相まって、画面が美しすぎるわ。見ていて心が癒されるわ」

来栖季雄は返事をせず、パソコンに目を向けたまま、真剣に仕事に取り組んでいた。