第222章 疑われた深い愛(10)

言い終わると、来栖季雄は振り返り、大股で表通りまで歩いていき、手を上げて二回ほど振ると、ちょうど空車が来たので、ドアを開けて中に滑り込んだ。車はすぐに車の流れの中に消えていった。

彼が現れてから去るまで、わずか2分ほどで、一言も言葉を交わさず、まるで本当に用事があって街に来て、たまたま便乗したかのようだった。

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鈴木和香は夜に撮影の予定があってスタジオに戻らなければならなかったことと、田中大翔と鈴木夏美の邪魔をしたくなかったので、三人は別々の道を取ることにした。田中大翔は鈴木夏美を予約していた場所に連れて夕食を食べに行き、鈴木和香は鈴木夏美の少し傷んだ車で山荘に戻ることにした。

夕食を済ませた後、鈴木和香は撮影現場に向かい、メイクをして着替えを済ませ、全ての準備が整った時には、撮影開始まであと30分ほどあった。