第216章 疑われた深い愛(4)

スタッフたちは来栖季雄が夜食を奢ると聞いて、すぐに歓声が上がった。

アシスタントは気前よく一人一箱ずつ配り、来栖スターからの夜食をいただけるというのは確かに嬉しいことで、何人かは写真を撮ってSNSに投稿した。すると、今夜撮影現場にいなかった俳優たちも集まってきたが、幸いアシスタントは余分に買っていたので、来た人全員に行き渡った。

スタッフたちは夜食があると聞いた時点で、急いで長い板を持ってきて即席の大テーブルを作り、みんなでそれを囲んで座って食べられるようにした。

今夜は鈴木和香のシーンがあり、メイクを落として戻ってきた時には、長テーブルの周りは既に人でいっぱいだった。彼女が席を探していると、松本雫が手を挙げて彼女の名前を呼んだ。鈴木和香は馬場萌子を連れて行くと、松本雫と来栖季雄の間にちょうど二つの空席があった。

馬場萌子が先に松本雫の隣の席に座ったので、鈴木和香は仕方なく来栖季雄の隣に座ることになった。

しかし、彼女は来栖季雄と数日間寝食を共にしたばかりだったので、以前のような緊張や不安はなく、むしろ来栖季雄のアシスタントが彼女に小龍蝦の箱を渡した時には、来栖季雄の方を向いて目を細めて微笑み、「ありがとうございます、来栖スター」と言った。

来栖季雄は何も言わず、表情もあまり変わらなかったが、使い捨て手袋を一組取り出して鈴木和香に渡した。

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田中大翔は午後、鈴木夏美を市内の自分のマンションに連れて行って服を取りに行ったが、鈴木夏美にベッドで寄り添ってキスをせがまれた時、つい火がついてしまった。

二人がベッドでイチャイチャするのを終えた時には既に夕方で、田中大翔はデリバリーを注文し、二人で食事を済ませた後、さらにしばらくマンションでイチャイチャしてから、撮影現場に戻った。

田中大翔が車をホテルの駐車場に停め、スマートフォンでナビを切ろうとした時、LINEグループに大量のメッセージが届いているのに気付いた。開いてみると、みんなが撮影現場で夜食を食べているということが分かり、鈴木夏美の方を向いて「向こうで誰かが夜食を奢ってるみたいだけど、見に行く?」と尋ねた。

鈴木夏美は時計を見て、まだ早い時間だしホテルに戻っても退屈だと思い、頷いて「いいわね」と答えた。

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