「世界にとってあなたはたった一人の人間だけど、私にとってあなたは世界のすべて」
「生きている限り、私はあなたを一番愛しています」
鈴木和香の言葉が終わってから長い時間が経ち、椎名佳樹の声が響いた。「和香……」
椎名佳樹はただ名前を呼んだだけで、録音の中で再び沈黙が続いた。長い間の沈黙の後、椎名佳樹の声が再び響き、真剣で感情的に聞こえた。「生きている限り、私はあなただけを愛します」
そして録音は完全に静かになった。
オフィス全体も静まり返っていた。来栖季雄は録音機を手に取った時の姿勢のまま、長い間動かなかった。
彼の表情は冷ややかで、悲しみも喜びも読み取れず、目を一瞬も離さずにその録音機をじっと見つめていた。
まるで神の手によって作られた精巧な彫像のようだった。
来栖季雄は自分がどれくらいの時間座っていたのか分からなかった。オフィスのドアをノックする音が聞こえるまで、彼はゆっくりと頭を上げ、閉じられたオフィスのドアを見つめた。唇が動いたが、声は出なかった。喉を強く鳴らし、録音機を強く握りしめ、やっと落ち着いた声で「入れ」と言った。
秘書がドアを開けたが、中には入らず、丁寧に敬意を込めて告げた。「来栖社長、もう午後7時ですが、お帰りになりますか?」
来栖季雄は目を伏せ、しばらく黙っていてから「先に帰っていいよ。私は後で車で帰る」と言った。
「はい」秘書は返事をして、二歩後ろに下がり、来栖季雄のオフィスのドアを静かに閉めた。
オフィスは再び静寂に包まれた。来栖季雄はしばらく静かに座っていてから、窗の外を見ると、本当に夜の闇が降り、街全体が輝く光に包まれていた。
来栖季雄はいつものようにタバコを取り出し、ゆっくりと立ち上がって床から天井までの窓の前に歩み寄り、一本のタバコに火をつけ、黙々と深く吸い始めた。
実は、ある事実はずっと前から分かっていた。しかし、彼らの愛の告白を自分の耳で聞いた時、心の底がこれほど痛みと苦さで想像以上に満ちていることに気付いた。
生きている限り、私はあなたを一番愛しています。
生きている限り、私はあなただけを愛します。
本当に憧れるほど美しい告白だね……
来栖季雄は思わず目を閉じ、心の中で渦巻く感情を抑えようと必死にタバコを深く吸い込んだ。しかし、急ぎすぎて咳き込んでしまい、急に頭を下げ、激しく咳き始めた。