鈴木和香は鉄の箱をどこに隠そうかと考えながら、思わず箱を開けてしまい、中に詰まった飛行機のチケットや電車のチケットを見て、指先でそれらを軽くめくってから、一番下にある水色の封筒を取り出した。
鈴木和香は封筒を開け、中から手紙を取り出すと、優美な文字が一行一行と彼女の目に飛び込んできた。
来栖季雄へ:
世の中の誰もが、誰かのために存在すると言われています。私の存在は、あなたのためにあるのだと思います。
私には大きな夢はありません。ただあなたと一緒にいられることを願うだけです。
私には文才もありません。ただ、五十年後も今のようにあなたを愛していられますようにと思うだけです。
この人生で、もうあなたのように深く愛する人は現れないと思います。
あなたには分からないでしょうが、あなたに出会った日から、私のすることは全て、あなたに近づくためでした。
私は多くの夢を見てきました。どの夢にもあなたがいました。私は多くの空想をしてきました。いつもあなたと一緒にいることを空想していました。私は多くの願いを掛けてきました。どの願いもあなたが私を愛してくれることでした。
世界にとって、あなたはただの一人かもしれません。でも私にとって、あなたは世界そのものなのです。
生きている限り、私はあなただけを愛します。
鈴木和香より。
手紙の裏には、薄いピンク色のペンで、福山雅治の歌詞を書いていた:最も美しいのは雨の日ではなく、一緒に軒下で雨宿りをしたことです。
当時の彼女は、大学卒業を間近に控えていたにもかかわらず、文字には依然として青春の幼さが残っていた。整然と並んだ文字の行間から、鈴木和香は当時この手紙を書いていた時の不安と恥じらいの気持ちを垣間見ることができた。
この手紙は、彼女が以前椎名佳樹のところへ行き、一字一句暗唱して見せたものだった。椎名佳樹は聞き終わった後、彼女のことを青臭いと罵ったが、それでも真剣に一文字を訂正してくれた。そして「生きている限り、私は最も愛します」は、「生きている限り、私はあなただけを愛します」に変わった。
誰が想像しただろうか、椎名佳樹が訂正したその一文字が、まさに予言となるとは。時は流れ、星は巡り、鈴木和香は今でも一途に来栖季雄だけを愛し続けている。