鈴木和香は鉄の箱をどこに隠そうかと考えながら、思わず箱を開けてしまい、中に詰まった飛行機のチケットや電車のチケットを見て、指先でそれらを軽くめくってから、一番下にある水色の封筒を取り出した。
鈴木和香は封筒を開け、中から手紙を取り出すと、優美な文字が一行一行と彼女の目に飛び込んできた。
来栖季雄へ:
世の中の誰もが、誰かのために存在すると言われています。私の存在は、あなたのためにあるのだと思います。
私には大きな夢はありません。ただあなたと一緒にいられることを願うだけです。
私には文才もありません。ただ、五十年後も今のようにあなたを愛していられますようにと思うだけです。
この人生で、もうあなたのように深く愛する人は現れないと思います。
あなたには分からないでしょうが、あなたに出会った日から、私のすることは全て、あなたに近づくためでした。