「奥様もお早めにお休みになってくださいね」千代田おばさんが一言言い残して、自分の寝室へ戻っていった。
リビングには再び鈴木和香一人が残された。彼女はしばらくテレビを見つめた後、壁の時計を見た。もう11時半近くなのに、来栖季雄はまだ帰ってこない。
あと30分で、彼の誕生日になるのに……
鈴木和香は下唇を噛みながら、脇に置いていた携帯電話を手に取った。来栖季雄に電話をして、今夜帰ってくるのかどうか聞きたかった。でも、電話番号を見つけた時、前回は彼を呼び戻す口実があったけど、今回は?
最近の日々は幸せで、まるで自分が彼の妻であるかのような錯覚を感じていた。でも、それはただの錯覚に過ぎない。いつかはこの夢から覚めなければならない。
鈴木和香は唇を引き締め、携帯電話を下に置き、膝を抱えてソファに座り込んだ。心ここにあらずの様子でテレビを見つめていたが、何が放送されているのかまったく分からなかった。