第266章 あなたへの誕生日プレゼント(6)

「しかし、来栖社長、これは先ほど洗車の際に、スタッフがお車の後部座席で見つけたものです」

このボイスレコーダーは鈴木夏美か鈴木和香のものに違いない……来栖季雄は眉間にしわを寄せ、足を止めると、助手の手からボイスレコーダーを取り上げ、エレベーターへと歩き出した。

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環映メディアに戻ると、来栖季雄のデスクには緊急の書類が山積みになっており、それらを処理し終えたときには午後四時半になっていた。

来栖季雄は手を上げ、疲れた眉間をさすりながら、だらしなくオフィスチェアに寄りかかった。約五分ほど静かに座っていたかと思うと、姿勢を正し、ついでにパソコンの電源を入れようとした時、デスクに置いていたボイスレコーダーが目に入った。

来栖季雄は少し躊躇した後、パソコンのパスワードを入力するのを止め、そのボイスレコーダーを手に取った。

このボイスレコーダーは購入してからしばらく経っているようで、所々に擦り傷がついていた。

来栖季雄はそのボイスレコーダーを手に取り、目の前で回してみたが、鈴木和香のものなのか、鈴木夏美のものなのか判断がつかなかった。人は誰しも好奇心があるもので、来栖季雄も車に置き忘れられたものは持ち主に返すべきだと分かっていながら、思わずボイスレコーダーの再生ボタンを押してしまった。

ボイスレコーダーからザーザーという雑音がはっきりと聞こえてきた。約十秒後、来栖季雄は聞き覚えのある声が、さらに聞き慣れた名前を呼ぶのを聞いた。「和香、一体何を話したいんだ?」

椎名佳樹の声だった。磁性のある、心地よい声色。

ボイスレコーダーからは鈴木和香の声は聞こえず、相変わらずザーザーという音が続いていた。しばらくすると、椎名佳樹の催促する声が聞こえた。「和香、話したいことがあるなら早く言ってよ。なんでドアまで閉めるの?」

「あら、和香が自分から水を注いでくれるなんて、珍しいね」

「佳樹兄、真面目にして。本当に大事な話があるの」ボイスレコーダーからようやく鈴木和香の声が聞こえた。柔らかく、少し甘えた声だった。

「はいはいはい、真面目にします」椎名佳樹の甘やかすような口調に続いて、彼はわざとらしく咳払いをした。「はい、今本当に真面目です。さあ、和香、話を聞かせてください」