第265章 あなたへの誕生日プレゼント(5)

以前、夏美も来栖季雄の車に乗ったことがあったため、和香と夏美は後部座席に座っていた。来栖季雄の車が交差点に差し掛かると、ちょうど赤信号だったので、ブレーキを踏んで車はゆっくりと停止した。彼がバックミラーを通して和香を見たとき、たまたま彼女の隣に置かれたショッピングバッグが目に入った。食事の時に夏美が、姉妹で午後に買い物に行って誕生日プレゼントを選んだと話していたことを思い出した。

椎名佳樹へのプレゼントだろう……来栖季雄は思わずそのプレゼントの袋を見つめてしまい、冷たい目の奥に一瞬の艶めかしさが浮かんだ。前方の信号が赤から青に変わっても気づかず、後ろの車がクラクションを鳴らすまで、来栖季雄はアクセルを踏まなかった。ハンドルを切って曲がり、しばらく走ってから、突然口を開いた。「午後、佳樹の誕生日プレゼントを買いに行ったのか?」