鈴木和香が会計をしようとしていた時、彼女はカウンターに寄りかかったまま、立ち去らずに中の商品を一つ一つ見ていた。最後に上品で高級なネクタイピンを見つけると、すぐに店員に見せてもらうよう指差した。
鈴木夏美は思わず冗談を言った。「和香、椎名佳樹へのプレゼントは一つじゃ足りないの?まだ買うの?」
鈴木和香は鈴木夏美に微笑みかけ、店員から手渡されたネクタイピンを両手で受け取った。まず数回眺めてから、自分の胸元に当ててみて、夏美の方を向いて尋ねた。「どう?」
鈴木夏美は二歩後ろに下がり、真剣に数回見つめてから、頷いた。「悪くないわね。」
鈴木和香は顔を下げ、しばらくネクタイピンを見つめ続けた。見れば見るほど気に入り、来栖季雄がこのネクタイピンを付けている姿を思い浮かべずにはいられなかった。