第257章 あなたは彼が誰を好きか知っていますか?(17)

鈴木和香が会計をしようとしていた時、彼女はカウンターに寄りかかったまま、立ち去らずに中の商品を一つ一つ見ていた。最後に上品で高級なネクタイピンを見つけると、すぐに店員に見せてもらうよう指差した。

鈴木夏美は思わず冗談を言った。「和香、椎名佳樹へのプレゼントは一つじゃ足りないの?まだ買うの?」

鈴木和香は鈴木夏美に微笑みかけ、店員から手渡されたネクタイピンを両手で受け取った。まず数回眺めてから、自分の胸元に当ててみて、夏美の方を向いて尋ねた。「どう?」

鈴木夏美は二歩後ろに下がり、真剣に数回見つめてから、頷いた。「悪くないわね。」

鈴木和香は顔を下げ、しばらくネクタイピンを見つめ続けた。見れば見るほど気に入り、来栖季雄がこのネクタイピンを付けている姿を思い浮かべずにはいられなかった。

鈴木夏美は少し待ちくたびれて、思わず急かした。「和香、決まった?」

鈴木和香はようやくネクタイピンを店員に渡した。「これを包んでいただけますか。」

店員は微笑みながら軽く頷いた。「お二人様のお買い物、一緒にお会計でしょうか、それとも別々でしょうか?」

鈴木夏美は財布から黒いカードを取り出し、考えもせずに気前よく言った。「一緒に。」

「別々で。」鈴木和香は手を伸ばして鈴木夏美の手を止め、店員に穏やかな笑みを向けながら言った。そして夏美の方を向いて続けた。「お姉ちゃん、誕生日プレゼントは自分で買わないと。」

鈴木夏美は少し呆れた様子で言った。「もう、好きにすれば。」

そして店員にカードを渡した。「じゃあ、私の分を先に通してください。暗証番号はありません。」

店員は愛想よく両手でカードを受け取り、手際よく会計を済ませ、鈴木夏美が選んだプレゼントを袋に入れて渡した。そして入口近くのサービスカウンターを両手で指し示しながら、丁寧に言った。「お客様、もしギフト用でしたら、あちらでカードや包装箱をお選びいただけます。」

鈴木夏美は微笑みながら軽く頷き、袋を受け取り、鈴木和香に「先に見てくるわ」と一言残して、サービスカウンターへ向かった。