第278章 あなたへの誕生日プレゼント(18)

朝、来栖季雄が目を覚ました時、鈴木和香はまだ眠っていた。彼は彼女を起こさないように、静かに身支度を整え、会社へ向かう準備をした。

寝室を出る時、ベッドでぐっすり眠っている鈴木和香を見つめ、少し考えてから、ゆっくりと戻って行き、彼女の寝顔をしばらく見つめた後、身を屈めて眉間に軽くキスをし、布団を掛け直してから寝室を出た。

来栖季雄が車のキーを探した時、朝に自分がポケットに入れておいた箱に触れた。車に乗り込んでから、少し躊躇したものの、やはり鈴木和香からもらったネクタイピンを箱から取り出し、バックミラーを見ながらネクタイに付け、満足げに車を発進させた。

鈴木和香が目を覚ましたのは、昼の11時近くだった。昨夜遅くまで起きていたせいで、まだ眠かったので、一度目を開けただけで、布団にくるまってまた眠ろうとした。しかし、目を閉じて30秒ほど経った時、今日の予定を思い出し、ベッドから飛び起きた。

まず時計を確認し、慌てて起き出して身支度を整え、階下へ降りた。

千代田おばさんは既に昼食の準備を済ませていた。鈴木和香は急いで食事を済ませると、千代田おばさんを2階に連れて行き、風船を膨らませたり部屋の装飾を手伝ってもらい始めた。

鈴木和香は寝室のバルコニーにある花台を移動させ、千代田おばさんの助けを借りて、注文しておいたキャンドルを並べた。

単純な「来栖季雄、お誕生日おめでとう」という7文字だけだったが、二人で並べるのに2時間もかかってしまった。

部屋の飾り付けが終わると、鈴木和香は部屋を見回して満足げな様子で、ケーキ作りの材料を全部キッチンに運ぶよう千代田おばさんに頼んだ。

鈴木和香は幼い頃から一度も料理をしたことがなく、ケーキ作りも今回が人生初めての挑戦だった。かなり手間取ったが、千代田おばさんの指導のおかげで、なんとか基本的なチーズケーキを焼き上げることができた。

鈴木和香はケーキが冷めるのを待って、外側にクリームを塗り、千代田おばさんに切ってもらった新鮮なフルーツをケーキの上に飾り付けた。そして、ケーキの中央の空いているスペースに、赤いクリームで少し歪んだ「お誕生日おめでとう」の文字を絞り出した。

鈴木和香は完成したケーキを見つめた。味は未知数だが、見た目はまあまあだったので、満足げに冷蔵庫に入れた。