第272章 あなたへの誕生日プレゼント(12)

すべての親は、自分の決断が子供のためだと思っているものです。鈴木夏美は両親を説得しようと試みましたが、結局失敗に終わり、大阪のアナウンサーの彼とも別れることになりました。

鈴木夏美は椎名佳樹をずっと友達としか見ていませんでした。男女間の感情は全くありませんでしたが、両親に逆らえない彼女は、最後には椎名佳樹との結婚を強いられるのではないかと本当に心配していました。

その頃、鈴木夏美はこの問題に悩まされ続けていました。留学して十数年も帰国しないという方法で、この縁談から逃げることも考えましたが、その計画を実行に移す前に、偶然ある会話を立ち聞きしてしまいました。

初夏の午後のことでした。何年経った今でも、あの日の天気が異常に良かったことをはっきりと覚えています。空は青く、雲は白く、風は穏やかでした。

その日、メイドが彼女の部屋を掃除していたので、トイレに行きたくなった彼女は近くにある鈴木和香のトイレを借りることにしました。当時、録音して歌を歌うアプリが流行っていて、彼女もそれに惚れていたので、トイレに入った時に録音を始めようとしました。すると、ドアの外から鈴木和香の声が聞こえてきました。「佳樹兄、お願いがあるんだけど、絶対に秘密にしてね。」

人は生まれつき好奇心があるものです。その言葉を聞いた瞬間、彼女は自分がしようとしていたことを忘れ、便座から立ち上がってトイレのドアに耳を当て、盗み聞きを始めました。そして、鈴木和香と椎名佳樹の会話から、鈴木和香が椎名佳樹を呼んだのは、ラブレターの鑑定を頼むためだったことを知りました。

そのラブレターの内容は本当に美しく、一文一文が切なく、一字一字が深い愛情に溢れていました。

お坊ちゃまの椎名佳樹は、珍しく真剣な様子で、落ち着いて鈴木和香がラブレターを読み終わるのを待ち、とても真摯にアドバイスをしました。

鈴木和香は椎名佳樹のアドバイスを受け入れ、喜んで椎名佳樹にお礼を言いながら、最初の約束通り、ラブレターの鑑定のお礼にアイスクリームを奢ることにしました。そうして二人はすぐに寝室を出て行きました。