七時四十分頃になると、招待客が次々と到着し始めた。
来栖季雄はどこかへ行ってしまい、赤嶺絹代、椎名一聡、鈴木和香の三人が笑顔で玄関に立ち、客人を出迎えていた。
その間、赤嶺絹代は執事を呼び、耳元で二言三言囁き、来栖季雄を探しに行くよう指示した。
七時五十分近くになっても、来栖季雄はまだ現れず、赤嶺絹代の目元に不快の色が浮かんだが、それでも落ち着いた様子で椎名グループの株主二人を笑顔で宴会場へと案内し、そっと立ち去った。別荘の玄関に着いた時、執事がドアを開けて入ってきた。赤嶺絹代は即座に冷たい声で尋ねた。「彼はどこ?」
執事が口を開く前に、来栖季雄が後に続いて屋内に入ってきた。
赤嶺絹代は執事に目配せをし、執事はすぐに察して宴会場へと客人の接待に向かった。
赤嶺絹代はハイヒールを履いた足取りで、優雅に来栖季雄の前まで歩み寄った。声を発する前に、二人の来客が入ってきたため、赤嶺絹代は即座に満面の笑みを浮かべ、来栖季雄の腕に手を回し、その来客に向かって笑顔で挨拶した。「馬場社長、奥様」