最後には、来栖季雄も自分の心の中で何を考えているのか分からなくなっていた。気づいた時には、目の前の便器には数本の吸い殻が浮かんでおり、胸ポケットの携帯電話が絶え間なく振動していた。携帯を取り出すと、鈴木和香からの着信だった。彼は応答せずに切り、手に持っていた半分の煙草も便器に投げ入れ、水を流した。
水が渦を巻いてザーッという音を立て、すぐに便器の中は静かになった。来栖季雄は深く息を吸い込み、服装を整えて個室のドアを開け、外に出た。そして洗面台の前に立ち、丁寧に手を洗い、ペーパータオルで拭き取ってから、トイレを出た。
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来栖季雄がトイレに入ってからそう経たないうちに、赤嶺絹代は人を探しに寄越し、鈴木和香と来栖季雄に準備するよう伝えた。これからケーキカットをするとのことだった。