鈴木和香はぼんやりと来栖季雄に食べさせてもらい、お腹がいっぱいになると、彼に向かって頭を振った。
来栖季雄も無理強いせず、箸を置き、千代田おばさんに目配せをすると、千代田おばさんはすぐに察して、お盆を持って寝室を出て行った。
来栖季雄は鈴木和香の背中のクッションを取り、彼女を横たわらせ、布団をかけ直すのも忘れなかった。
鈴木和香は長時間眠っていたため、体は弱っているものの、あまり眠くはなく、退屈そうに横たわっていた。起き上がって携帯を取ろうとしたが、布団をめくった途端、来栖季雄の声が聞こえた。「何をするつもり?」
鈴木和香は一瞬固まり、顔を上げて、無邪気な目で来栖季雄を見つめながら言った。「携帯を取りたいの」
来栖季雄は何も言わず、ただテーブルまで歩いて行き、彼女の携帯を取って渡した。