第337章 2つの「ごめんなさい」(17)

別荘の門の外にある街灯の下まで歩いてきた来栖季雄は、やっと立ち止まり、手に持っていた燕の巣を助手に渡して、簡潔に指示を出した。「この燕の巣を調べてくれ。信頼できる医者を探して、椎名家の人々に気づかれないように。結果が出たら、すぐに連絡してくれ」

-

これまで鈴木和香は生理の時期になると体力が落ちることはあったが、今回ほど酷くなったことはなかった。まるで大病を患ったかのように、体が思うように動かないことが多かった。

体がだるいため、鈴木和香はほとんどの時間を眠って過ごしていた。しかし、目が覚めるたびに来栖季雄が寝室にいて、水を飲ませたり、食事を食べさせたりしてくれた。

最初は、彼のこのような細やかで優しい振る舞いに戸惑い、慣れない様子だったが、数日が経つと次第に慣れてきた。

五日後には撮影現場に戻る予定だったが、監督から電話があり、急用で二日延期になったという連絡が入った。

鈴木和香は最初の三日間は出血量が多かったが、ほらだんだん少なくなり、六日目にはほとんど出血が止まった。体の衰弱も前ほどではなくなり、ベッドから起き上がって動き回れるようになり、三食も階下で食べられるようになった。

来栖季雄は最近休暇を取っているようで、毎日ほとんど外出せず、彼女と同じように家に籠もっていた。誕生日の夜の突然の態度の変化にまだ少し気になっていたものの、二人で朝から晩まで顔を合わせていれば、会話や接触は避けられない。そのため、来栖季雄への冷たい態度も徐々に和らいでいった。以前のような親密さはないものの、二人の生活は穏やかで安定していた。

七日目になると、鈴木和香の出血は完全に止まり、体調も随分良くなった。昼寝の時間も以前ほど長くなく、一時半に寝て、二時には目が覚めた。目を開けると、習慣的に寝室を見回したが、来栖季雄の姿が見当たらず、心の中に寂しさが込み上げてきた。

これまでは、目が覚めるたびに寝室で彼の姿を見ることができたのに……

鈴木和香は気分が沈んでいた。スリッパを履いて寝室を出て、階段を降りながら、リビングを見回したが、やはり来栖季雄の姿は見当たらなかった。

千代田おばさんがリビングでテレビを見ていたが、鈴木和香が降りてくるのを見ると、すぐに立ち上がって尋ねた。「奥様、お目覚めですか?」