第338章 2つの「ごめんなさい」(18)

来栖季雄はアシスタントから送られてきたメッセージを見つめたまま、心の中で何とも言えない緊張感を覚えた。眠っている鈴木和香をしばらく見つめた後、部屋を出て、ドアを閉め、隣の書斎に向かい、アシスタントに電話をかけた。

アシスタントはすぐに電話に出た。彼が何も言わないのを当たり前のように、アシスタントは自分から報告を始めた。「来栖社長、私が信頼できる大学の同級生に鑑定を依頼したんです。本来なら翌日には結果が出たはずなんですが、その同級生が海外に行っていて、昨日帰国したばかりで、今朝すぐに会いに行きました。」

「ああ」来栖季雄は相槌を打ち、聞いていることを示した。

アシスタントは本題に入らず、むしろ尋ねた。「来栖社長、その燕の巣はどちらから?」

来栖季雄は眉間にしわを寄せ、心の中に不吉な予感が浮かび上がってきた。

アシスタントはその夜、来栖季雄が燕の巣の調査を依頼した際、椎名家の者には知らせないようにと言われたことを思い出し、さらに尋ねた。「来栖社長、この燕の巣は椎名家の者からですか?」

来栖季雄はまだ声を出さなかった。

電話の向こうのアシスタントは、さらに確信を深めたかのように続けた。「この燕の巣は、君が食べたものですか?」

来栖季雄はここまで聞いて、自分の心の中の推測を完全に確信した。彼の声は冷静さの中に緊張と暗い感情が混ざっていた。「燕の巣に、睡眠薬が入っていたのか?」

今度はアシスタントが黙り込んだ。来栖季雄も催促せず、冷静に待っているようだった。しばらくして、アシスタントがようやく口を開いた。「来栖社長、燕の巣には確かに睡眠薬が入っていました。量も少なくありません。しかも、その睡眠薬には安定剤の成分が含まれていて、多く摂取すると深い昏睡状態に陥る可能性があります。」

来栖季雄には一目で真相を見抜く能力はなかった。ただ、千代田おばさんから燕の巣が鈴木和香が撮影現場から持ち帰ったものだと聞いた時から疑いを持ち、それで鈴木和香を試そうとしたのだ。それは疑いというよりも、直感に近いものだった。ちょうど鈴木和香と子供が出て行った夜に、彼が落ち着かなくなって桜花苑に戻ってきたように。

その直感があったからこそ、アシスタントに調査を依頼した。