第353章 2つの「愛してる」(9)

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帝国グランドホテルで食事をしているとき、監督がカラオケに行こうと提案した。撮影がもうすぐ終わるため、これからみんなで集まれる機会は少なくなるだろうということで、誰も反対せず、食事が終わった後、午後10時半頃、一行は近くの「金色宮」へと車を走らせた。

鈴木和香は松本雫と田中大翔の車に同乗し、途中で給油したため「金色宮」に最後に到着した。個室に入ると、和香は食事前に用事があって先に帰った来栖季雄が、なんと既にそこにいるのを見かけた。大画面の前で優雅な姿勢で立ち、iPadのメニューを手に持ち、スタッフに飲み物を注文していた。彼らが入ってくるのを見て、顔を上げ、和香を一瞥した。

監督は三人が入ってくるのを見て、すぐに曲選択機を指差して手を振った。「さあさあ、三人とも曲を入れて。一人最低二曲ずつね」