「あぁ……」記者は来栖季雄の言葉を聞き終わると、すぐに驚きの声を上げ、相変わらず面白おかしく二人を冗談めかして言った。「鈴木さんと来栖社長は相思相愛のようですね。それでは来栖社長と鈴木さんの愛が末永く続きますように……」
記者は適度なところで止め、口調を真面目にした。「もちろん、今のは皆さんと冗談を言っただけです。さて、今日のインタビューはここまでとさせていただきます。来栖季雄と鈴木和香が出演する『傾城の恋』をぜひご期待ください」
記者の言葉に続いて、来栖季雄と鈴木和香は前後してカメラに向かって「さようなら」と言った。
鈴木和香は来栖季雄が先ほどの自分の冗談に合わせただけで、あんな情熱的な言葉を言ったのだと分かっていた。でも彼女の心は少し動揺せずにはいられなかった。彼女の本心が冗談になってしまったけれど、彼の冗談を本心だと想像することはできた。