友達……若かった頃、貧しさと劣等感のせいで、彼女の傍で黙って友達でいるしかなかった。でも、その時から、彼の心の中では、彼女とただの友達になりたかったわけじゃなかった。
ほら、彼女と椎名佳樹に婚約があると知った時、自分と彼女には何の接点もないから、きっと彼女のことを忘れられるだろうと思った。でも、本当に彼女と疎遠になってみると、そんな日々がどれほど暗いものだったか分かった。その時、どんなに彼女に近づける理由が欲しかったことか。たとえ話せなくても、遠くから一目見られるだけでも満足だったのに。でも、そんな些細な願いさえ叶わず、二人は他人同然になってしまった。
もし椎名佳樹が事故に遭わなければ、彼と彼女は平行線のように、二度と交わることはなかっただろう。
でも今、椎名佳樹が目を覚まし、彼と彼女の関係も終わりを迎えようとしている……