来栖季雄は夕食を済ませ、寝室に戻ると、鈴木和香がテレビを見ていた。彼は彼女を邪魔せず、ただ隣に座って一緒に見ていた。夜の九時半になり、鈴木和香が見ていたドラマがちょうど終わったとき、来栖季雄はようやく声をかけた。「何か食べる?」
鈴木和香が軽く頷くと、来栖季雄は立ち上がって寝室を出て、しばらくすると湯気の立つオートミール粥を持って戻ってきた。
来栖季雄が言った通り、彼女は本当にオートミール粥が好きで、千代田おばさんに作ってもらうときはいつも砂糖を多めに入れてもらっていた。今日の千代田おばさんの作ったオートミール粥も、いつも通り甘くて美味しかったはずなのに、鈴木和香には漢方薬を飲むような気分で、一口一口が喉を通りにくかった。
鈴木和香は味も分からないまま、一杯の粥を無理やり胃に押し込むように食べた。空になった茶碗をテーブルに置くと、浴室に行って歯を磨いた。出てきたとき、来栖季雄も空の茶碗も見当たらなかった。