鈴木和香は何も言わず、二人は向かい合って座っていた。どれくらいの時間が経ったのか分からないが、来栖季雄のまつ毛が軽く揺れ、我に返った。十数分ほど経って、彼は少し姿勢を正し、鈴木和香の目を見つめながら、先ほど彼女を呼んだ時のことを思い出した。椎名佳樹が目を覚ましたら、彼女は彼のもとに戻るのかと聞こうとしていたのだ。
しかし、その質問を口にする前に、彼女は既に告げていた。彼女は去る、彼のもとから引っ越すのだと……
彼は分かっていた。彼女との時間は盗んだ幸せに過ぎないこと、いつかは別れなければならないことを。だが、こんなにも突然とは思わなかった……たった今まで、彼女が作ってくれた朝食に幸せを感じ、感動していたというのに。次の瞬間、パラダイスから地獄へと突き落とされた。あまりにも激しく、あまりにも痛い落下で、長い間、現実を受け入れることができなかった。