第409章 さようなら青春、さようなら私の恋(19)

鈴木和香は何も言わず、二人は向かい合って座っていた。どれくらいの時間が経ったのか分からないが、来栖季雄のまつ毛が軽く揺れ、我に返った。十数分ほど経って、彼は少し姿勢を正し、鈴木和香の目を見つめながら、先ほど彼女を呼んだ時のことを思い出した。椎名佳樹が目を覚ましたら、彼女は彼のもとに戻るのかと聞こうとしていたのだ。

しかし、その質問を口にする前に、彼女は既に告げていた。彼女は去る、彼のもとから引っ越すのだと……

彼は分かっていた。彼女との時間は盗んだ幸せに過ぎないこと、いつかは別れなければならないことを。だが、こんなにも突然とは思わなかった……たった今まで、彼女が作ってくれた朝食に幸せを感じ、感動していたというのに。次の瞬間、パラダイスから地獄へと突き落とされた。あまりにも激しく、あまりにも痛い落下で、長い間、現実を受け入れることができなかった。

自分のものではないものは、結局は自分のものにはならない。たとえ美しい錯覚があったとしても、それは錯覚に過ぎない。今や、夢から覚め、すべては原点に戻るのだ。

来栖季雄は再び瞬きをし、喉の奥に酸っぱさを感じた。しばらくしてその苦みが引くのを待ってから、口を開いた。「君は……」

一言だけ発して、言葉に詰まった。約十秒の沈黙の後、やっと残りの言葉を紡ぎ出した。「……いつ出て行くつもりだ?」

鈴木和香は来栖季雄の漆黒の深い瞳を見つめ、少し間を置いて答えた。「今日です。」

「今日か」来栖季雄のテーブルの上の手が激しく震え、呟くように低い声で言った。そして唇を固く結び、呼吸が乱れ始めた。「必ず……」

来栖季雄はたった二言を発しただけで、椅子の背もたれに寄りかかり、天井を見上げた。表情は穏やかだったが、誰も彼の心の中でどれほどの痛みが渦巻いているかは知らなかった。

再会した時から、いつか別れの日が来ることは分かっていた。ただ、別れの直前になって初めてそれを知ることになるとは思わなかった。

本当に聞きたかった。必ず行かなければならないのかと。

本当に聞きたかった。私と一緒にいてくれないかと。

本当に彼女に言いたかった。和香、君は知っているか?私は青春のすべてを君を愛することに費やした。今や私の青春も終わりに近づいている。美しい結末を私にくれないか?