第410章 さようなら青春、さようなら私の恋(20)

来栖季雄は鈴木和香の言葉を聞いていないかのように、まったく反応を示さなかった。

鈴木和香は立ち上がり、十秒ほど立っていた後、向きを変えてレストランを出た。

レストランのドアが閉まる音が聞こえるまで、窓の外を見つめていた来栖季雄は、やっと振り向いて鈴木和香が座っていた場所を見つめた。その顔色は恐ろしいほど青ざめていた。

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鈴木和香は寝室に戻り、ドアを閉めるとすぐに、涙が抑えきれずに溢れ出した。手で拭おうとしたが、涙はさらに激しく流れ出し、最後には彼女はドアに寄りかかったまま、ゆっくりとしゃがみ込んで、思う存分泣き出した。

病院で人工中絶手術を受けたことを確認した日、一人で長い間泣いて、心の中の辛さをすべて流し出したつもりだった。そして最後には来栖季雄から離れる決心までしたのに、実際にその決心を実行しようとすると、まるで自分の心臓を胸から無理やり引き抜くようなものだと気づいた。

十三年間の密かな片思いだった。人生で最も美しく輝かしい時期を、すべて彼に捧げてきた。今、彼を自分の人生から無慈悲にも切り離さなければならない。本当に痛い...でも、どうしようもない。彼が自分の子供を躊躇なく堕ろしたと知った後では、もう全力で彼を愛し続けることはできない。

これからの人生がどうなるのか分からない。また誰かを愛するようになるのかも分からない。でも一つだけ確かなことがある。もう二度と、来栖季雄のように、こんなにも卑屈に、こんなにも弱々しく、こんなにも後悔なく愛する人は現れない。彼からの痛みも傷も、すべて蜜のように甘く受け入れてしまうような、そんな愛は二度とない。

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鈴木和香の持ち物は多くなかった。来た時は一つのスーツケースだけで、帰る時も一つのスーツケース。ただ、数着の服と数足の靴、そして来栖季雄からもらった陶器人形が増えただけだった。

鈴木和香が自分のスーツケースを持って寝室を出た時には、すでに昼を過ぎていた。来栖季雄は別荘にはおらず、スーツケースは少し重かったので、彼女は直接エレベーターを使った。