第410章 さようなら青春、さようなら私の恋(20)

来栖季雄は鈴木和香の言葉を聞いていないかのように、まったく反応を示さなかった。

鈴木和香は立ち上がり、十秒ほど立っていた後、向きを変えてレストランを出た。

レストランのドアが閉まる音が聞こえるまで、窓の外を見つめていた来栖季雄は、やっと振り向いて鈴木和香が座っていた場所を見つめた。その顔色は恐ろしいほど青ざめていた。

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鈴木和香は寝室に戻り、ドアを閉めるとすぐに、涙が抑えきれずに溢れ出した。手で拭おうとしたが、涙はさらに激しく流れ出し、最後には彼女はドアに寄りかかったまま、ゆっくりとしゃがみ込んで、思う存分泣き出した。

病院で人工中絶手術を受けたことを確認した日、一人で長い間泣いて、心の中の辛さをすべて流し出したつもりだった。そして最後には来栖季雄から離れる決心までしたのに、実際にその決心を実行しようとすると、まるで自分の心臓を胸から無理やり引き抜くようなものだと気づいた。