第448章 なぜ私の子供を望まなかったの?(8)

この時、空はすでに暗くなりかけていた。来栖季雄は周りの崖を見て、撮影場所よりもずっと低いことに気づいた。つまり、このまま流されていけば、水面と岸の高低差は徐々に小さくなり、やがて岸に上がれるはずだった。

来栖季雄は頭を下げ、腕の中で気を失っている鈴木和香を見つめながら、さらに流れに身を任せた。

どれくらいの時間が経ったのかわからなかったが、月明かりを頼りに見ると、予想通り両側の崖は徐々に低くなっていき、最後には地面との差が半メートルもないほどになっていた。水の流れも穏やかになり、来栖季雄は鈴木和香を抱えながら岸に近づき、まず彼女を岸に押し上げてから、自分も這い上がった。

来栖季雄はまず鈴木和香の腹部を押して、飲み込んだ水を吐き出させた。それほど多くの水が出てこなかったのを見て少し安心し、彼女の額に手を当てると熱はなく、呼吸も正常だった。そこでようやく完全に緊張が解け、気絶しただけで済んでよかったと思った。

来栖季雄は周りを見回した。果てしない原生林が広がり、人の気配は全くなかった。ポケットを探ると、携帯電話と水で変形した煙草の箱、そしてライターが出てきた。

携帯電話は長時間水に浸かっていたため、電源が入らなかったが、ライターはまだ使えそうだった。

来栖季雄は鈴木和香の水滴る服を見た。このまま寝かせれば風邪を引くのは確実だった。救助隊がいつ彼らを見つけられるかわからない。病気になれば確実に厄介なことになるが、ここで火を起こすわけにもいかなかった。原生林は乾燥しており、少しでも不注意があれば大火事になり、二人とも火の海に飲み込まれてしまうだろう。

来栖季雄は少し考えてから、まだ眠っている鈴木和香を背負い、風をしのげる場所を探して森の中へと歩き出した。

来栖季雄は直感だけを頼りに、適当な方向に歩き始めた。

幸い月明かりが明るく、世界を冷たく照らしており、懐中電灯を持っていない来栖季雄でも道を確認することができた。

森の地面には落ち葉や枝が散らばっており、踏むたびにカサカサと音を立てた。

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鈴木和香が目を開けた時、少し茫然としており、自分が今どういう状態なのかよく理解できなかった。