撮影クルーの他のメンバーたちが崖の端に集まってきて、全員の表情が一様に暗かった。
川の流れは非常に速く、所々に渦を巻いていた。全員が目を見開いて見ていたが、一瞬のうちに鈴木和香の姿は流れに飲まれて見えなくなってしまった。約5分後、来栖季雄が水面に浮かび上がってきた。全員が声を張り上げて来栖季雄の名を呼んだが、下の水音が大きすぎて来栖季雄には全く聞こえていなかった。彼は周囲を見回し、しばらくして和香が流された方向に向かって泳いでいった。
そのとき、来栖季雄のアシスタントがようやく我に返り、岸辺で呆然と立ち尽くす人々に向かって大声で叫んだ。「何をぼんやり見ているんですか!早く警察に通報してください!通報を!」
「そうだそうだ、通報だ!」アシスタントに促されて、全員が我に返り、慌ただしく携帯電話を取り出して電話をかけ始めた。