来栖季雄が予想した通り、午前10時頃になると、森の中に二人の人物が現れた。一人は老人で、もう一人は中年の男性で、二人とも猟銃を背負い、野ウサギなどの獲物を手に提げていた。
二人は明らかに、このような人里離れた原生林で、二人の外部の人間に出会うとは思ってもいなかったようで、驚いていた。特に鈴木和香の着ている赤い古装束を見て、表情が一層驚愕に変わり、何か妖怪に出会ったのかと思ったようだった。
来栖季雄は、彼と鈴木和香が撮影中に遭遇した事故の状況を、詳しく二人に説明した。二人はそれを聞いて、やっと表情が和らぎ、躊躇することなく、すぐに鈴木和香と来栖季雄を彼らの村に連れて行くことを承諾した。
原生林の道は元々歩きにくく、鈴木和香は足を怪我していたため、来栖季雄が彼女を背負って歩いた。