第468章 安らかで素敵な時(8)

「和香!」

「鈴木さん!」

「君!」

全員がほぼ同時に叫び声を上げた。

来栖季雄が真っ先に鈴木和香に向かって走り出し、その後ろを椎名佳樹が追った。ただし、椎名佳樹の方が鈴木和香が倒れた場所に近かったため、来栖季雄がどんなに速く走っても、椎名佳樹の方が先に鈴木和香の前に着き、しゃがみ込んで彼女を抱き上げた。

椎名佳樹は優しく鈴木和香の頬を叩き、柔らかな声で彼女の名前を二度呼んだが、鈴木和香は力なく彼の肩に寄りかかったまま、まったく反応を示さなかった。

来栖季雄は身を屈めようとした動作を、そのまま硬直させた。椎名佳樹の腕の中で目を閉じ、顔色の悪い鈴木和香を見つめ、その眼差しは少し呆然としていた。

先ほどの激しい走りのせいで、彼の呼吸は乱れ、手はまだ伸ばしたままの姿勢で固まっていた。