第488章 婚約解消(8)

鈴木夏美はオフィスに二人しかいないのを見て、すぐに来栖季雄の机の前に歩み寄り、持参した写真を「バン」と勢いよく机の上に叩きつけた。

来栖季雄は音を聞いて眉間を動かしたが、依然として目を閉じたまま、指で太陽穴をマッサージしていた。

鈴木夏美は来栖季雄の冷淡な態度を見て、これまでの年月、彼がいつもこのように自分に接してきたことを思い出し、感情が高ぶってきて、抑えきれずに口を開いた。「私が見せているものが何なのか、よく見た方がいいわよ!」

来栖季雄の表情は良くなく、鈴木夏美がいつもこのように高慢な態度で話すことに苛立ちを感じているようだった。しばらく間を置いてから、やっと手を下ろし、姿勢を正して、机の上の写真に目を通した。そこには自分と鈴木和香が写っていたが、彼の表情にはさほど変化がなく、ゆっくりとコーヒーを手に取って一口飲んだ。「この写真、どうして君が持っているんだ?」

「あなたはこの写真の存在をすでに知っていたのね?」鈴木夏美は来栖季雄の言葉に隠された意味を聞き取り、まず反問してから、すぐに理解したように言った。「そうよね、この写真が撮られたのに芸能ニュースで騒ぎにならなかったということは、あなたが封じ込めたということよ。でも来栖季雄、あなたがどんなに力があって世間を騒がせないようにできたとしても、これらの写真が裏で出回らないという保証にはならないわ。」

来栖季雄は目を伏せたまま、少し熱いコーヒーを吹き、もう一口飲んだ。まるでこのオフィスに自分一人しかいないかのような冷淡な様子だった。

鈴木夏美は密かに拳を握りしめ、さらに言った。「和香が今どこにいるか、知っているの?」

鈴木夏美の言葉が落ちると同時に、彼女は来栖季雄がコーヒーカップを持つ手が一瞬止まるのをはっきりと見た。鈴木夏美は自分の心の中がどんな感情なのか言い表せなかったが、少し間を置いてから口を開いた。「和香は両親に呼ばれて鈴木家に戻されたの。今この写真のせいで。」

来栖季雄の持っていたコーヒーカップから、コーヒーが手の甲にこぼれ、小さな赤い火傷を作った。彼の表情からは相変わらず大きな感情の起伏は読み取れなかったが、眉目の間には一筋の心配の色が漏れていた。