第489章 婚約解消(9)

「来栖季雄、多くの場合、人々は女性だけを非難して、男性を非難しないわ。あなたにも過ちはあるのに、誰もあなたを責めない。でも、和香の後ろで、あんなにたくさんの人が彼女のことを水商売だとか、不貞だとか噂しているのよ」

「あなたは彼女を愛していると言うけど、これがあなたの愛なの?」

「彼女の名誉を傷つけ、評判を台無しにして、これから和香が東京のビジネス界でどうやって生きていけるというの?」

鈴木夏美は感情が高ぶりすぎたせいか、最後の方では口調が少し厳しくなっていた。

彼女は一瞬間を置いてから、先ほどよりもずっと落ち着いた声で続けた。「それに、来栖季雄、和香は両親を早くに亡くしているの。この世界で彼女に残された唯一の家族は、私の両親と私だけよ。あなたは本当に、最後まで彼女をあなたと同じように、孤独な一人にしたいの?」