第500章 婚約破棄(20)

来栖季雄は席に座り、周りの人々の議論を聞きながら、表情は相変わらず冷淡そうに見えたが、心の中は激しく揺れ動いていた。

「あの鈴木家のお嬢さんは本当に可哀想だね。」

来栖季雄はこの言葉を聞いた瞬間、頭の中に多くの場面が走馬灯のように駆け巡った。

鈴木夏美からもらったイヤホンで、鈴木和香と椎名佳樹の会話を聞いた時のこと……椎名佳樹が目覚めた時、彼を抱きしめて喜び泣く鈴木和香の姿……そして最後には、鈴木和香が悲しみに暮れて泣く顔へと変わっていった。

来栖季雄の胸は、まるで誰かに強く殴られたかのように痛んだ。彼は突然、手に持っていた箸をテーブルに叩きつけ、「パン」という音を立てた。その音に、テーブルの全員が口を閉ざして来栖季雄を見つめ、隣のテーブルの人々までもが振り向いた。全員が立ち上がった来栖季雄を不思議そうに見つめていた。