第499章 婚約破棄(19)

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午前十時から午後五時まで、来栖季雄はようやく少しの隙間を見つけ出し、人気のない場所で一本のタバコを吸って、一息つくことができた。

タバコを半分吸ったところで、来栖季雄はスマートフォンを取り出し、しばらく眺めた後、鈴木和香のWeChatを開いて、メッセージを返そうとした……

鈴木夏美の言う通りだった。彼と鈴木和香の関係が親密になればなるほど、曖昧になればなるほど、鈴木和香が受ける傷は大きくなる。

彼は自分勝手すぎた。彼女に近づきたかったが、こんなに大きな問題を引き起こしてしまった。

前回は流産、そして今回は名誉を失うことになるのか?

愛の名の下に、彼女を何度も傷つけ続けることはできない。

来栖季雄はそう考えると、最後にスマートフォンをしまい、強くタバコを一服吸った。煙の輪をまだ吐き出していないうちに、秘書が現れ、「来栖社長、そろそろ出発の時間です。夕食会が始まります」と告げた。

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食事会には東京から来た多くのビジネスパートナーがおり、皆互いに知り合いで、同じテーブルに座っていた。

来栖季雄は普段から寡黙で、今回も同様だった。席に着いてから、皆が次々と酒を酌み交わす中、彼の発した言葉は十文字にも満たなかった。

男性も女性と同じように、骨の髄まで噂好きな面がある。

酒が進むにつれ、人々は様々な話題で盛り上がり始めた。

皆が話題にする人物について、来栖季雄も聞いたことはあったが、自分には関係のないことなので無関心を貫いていた。

最後には誰かが話題を椎名グループに向けた。

「椎名グループの副社長、赤嶺絹代が最近数十億円の資金を調達したらしい。投資するつもりみたいだ」

「あの女性は常に大胆な決断力がある。椎名グループの半分以上の基盤は彼女が固めたものだからな」

「一、二度取引したことがあるが、頭脳明晰で考え方もしっかりしている。ただ、少し抜け目なさすぎるかな」

……

赤嶺絹代についての話題は、称賛する人もいれば批判する人もいた。話が続く中、誰かが「そういえば赤嶺絹代と言えば、思い出したんだけど、聞いた?最近、椎名家の坊ちゃんが鈴木家のお嬢さんと離婚騒動を起こしているらしいよ」と言い出した。

それまで無関心を装っていた来栖季雄は、この言葉を聞いた瞬間、耳を澄ませた。