第554章 13年間愛してた(24)

彼女の頭脳は冴えていて、自分の体力が徐々に失われていくのをはっきりと感じ取ることができた。意識も同時に薄れていき、心の中に恐怖が芽生えた。体の中には、来栖季雄にまだ書き終えていないメッセージを送るという一つの思いだけが残っていた。

これが彼との最後の会話になるかもしれないと思った。

鈴木和香は必死に手を上げ、近くにある携帯電話を掴もうとした。しかし、指を動かした瞬間、全身の隅々まで骨を刺すような痛みが走った。彼女は痛みに耐えながら、とても大きな力を使って、ようやく携帯電話に手が届いた。しかし、携帯電話を持ち上げる力さえ出せず、結局、携帯電話を自分の前まで引きずることしかできなかった。画面を点灯させた直後、目の前が真っ暗になり、完全に意識を失った。

鈴木和香が気を失うと同時に、連続して三回のメッセージ着信音が、ピンポンピンポンと鳴り響いた。点灯したままの携帯電話の画面には、来栖季雄からの三つのメッセージが表示されていた。

【ごめん。】

【和香、今夜の食事の時に、ちゃんと話し合おう。】

【麗景楼で待ってる。】

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二人の使用人が台所で料理をしていると、外から悲鳴が聞こえ、慌てて走り出た。執事が階段のところで足首を押さえながら座り、「和香様」と心を引き裂くような声で叫んでいた。そして鈴木和香は携帯電話に手を置いたまま、階段の前の血だまりの中に横たわっていた。

床は白く、鮮やかな赤と相まって、その光景は目を覆いたくなるほど衝撃的だった。

二人の使用人は丸三分間呆然としていたが、その中の一人が我に返り、よろよろと家の外に走り出し、外に立っていた椎名佳樹に向かって慌てふためいて叫んだ。「若様、若様、大変です!和香様が階段から落ちてしまいました……」

椎名佳樹の指が激しく震え、手に持っていた半分燃えた煙草を地面に投げ捨て、家の中に駆け込んだ。彼を呼んだ使用人が入り口に立って邪魔をしていたので、その使用人を一押しのけ、赤い血だまりの上に横たわる鈴木和香の姿を目にした。

椎名佳樹の顔色が一瞬で青ざめ、まるで発狂したかのように、呆然と立ちすくむもう一人の使用人に向かって大声で叫んだ。「救急車!早く救急車を呼べ!」

そして、ほとんど飛び込むような勢いで鈴木和香の前まで走り、震える指で彼女を地面から抱き上げ、何も考えずに外へと走り出した。

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