椎名佳樹は環映メディアの入り口に車を停め、ロビーに入ると、新しいフロント係の女性は彼を知らず、丁寧に止めて、誰を探しているのかと尋ねた。
椎名佳樹が「来栖季雄」と名乗ろうとした時、ポケットの携帯電話が鳴り出した。彼はフロント係の女性に少し待つようジェスチャーをして、脇に寄って電話に出た。
執事の話を聞くにつれ、椎名佳樹の表情は次第に怒りを帯びていき、最後には考えることもなく電話を切り、フロント係の女性の質問や制止を全く無視して、怒りに任せてエレベーターに向かい、そのままエレベーターのドアを開け、上階へ向かい、最上階を目指した。
エレベーターのドアが開くと、椎名佳樹は来栖季雄のオフィスに向かって真っ直ぐに歩いていった。途中、来栖季雄の秘書室を通りかかると、古参の秘書の一人が椎名佳樹を認め、急いで立ち上がって丁寧に挨拶をした。「椎名様、来栖社長をお探しですか?」