第544章 13年間愛してた(14)

椎名佳樹は環映メディアの入り口に車を停め、ロビーに入ると、新しいフロント係の女性は彼を知らず、丁寧に止めて、誰を探しているのかと尋ねた。

椎名佳樹が「来栖季雄」と名乗ろうとした時、ポケットの携帯電話が鳴り出した。彼はフロント係の女性に少し待つようジェスチャーをして、脇に寄って電話に出た。

執事の話を聞くにつれ、椎名佳樹の表情は次第に怒りを帯びていき、最後には考えることもなく電話を切り、フロント係の女性の質問や制止を全く無視して、怒りに任せてエレベーターに向かい、そのままエレベーターのドアを開け、上階へ向かい、最上階を目指した。

エレベーターのドアが開くと、椎名佳樹は来栖季雄のオフィスに向かって真っ直ぐに歩いていった。途中、来栖季雄の秘書室を通りかかると、古参の秘書の一人が椎名佳樹を認め、急いで立ち上がって丁寧に挨拶をした。「椎名様、来栖社長をお探しですか?」

椎名佳樹は秘書の挨拶を全く無視し、憎しみを帯びた様子で来栖季雄のオフィスの前まで歩き、手を上げ、力強くドアを押し開けて中に入った。

来栖季雄は丁度デスクで電話を受けていたが、物音を聞いて顔を上げ、怒りに満ちた表情の椎名佳樹を見ると、受話器に「申し訳ありません」と一言告げ、受話器を置いて立ち上がり、デスクを回って入口まで歩き、椎名佳樹が開けたオフィスのドアを閉めた。

「来栖季雄、なぜドアを閉める?外の社員たちにお前のやった吐き気がする行為を聞かれたくないのか?」椎名佳樹は来栖季雄がドアから手を離す前に、激怒して飛びかかり、来栖季雄の襟首を掴み、目に凶暴な光を宿らせ、歪んだ表情で言い始めた。「来栖季雄、よくやったな。まず母を誘って十数億を投資させて全て損失を出させ、それを機に椎名グループの株価を下げ、自分で大量に買い集めた。まさかお前の腹の中にこんな策があったとは。よく隠していたな。俺がこれまでお前を実の兄のように思っていたのに、最後にこんな仕打ちをするとは。言っておくが、当時不倫をしていた小三は、お前の母親だ。俺の母親じゃない...」

椎名佳樹の最後の言葉に、来栖季雄の表情は一瞬にして冷たくなった。彼の目には氷のような怒りが宿り、静かに尋ねた。「言い終わったか?」