来栖季雄が最後の言葉を言い終えた時、オフィスのドアの外を見やると、そこには顔色の悪い鈴木和香が立っていた。彼は唇を少し動かし、彼女から目を離さなかった。
「来栖季雄、母さんに何も起こらないことを祈るんだな。もし母さんに何かあったら、絶対に許さないからな!」椎名佳樹は歯を食いしばってそう言うと、怒りに任せて身を翻し、オフィスの外へと向かった。
鈴木和香は椎名佳樹が自分の前まで来た時、心の中で動揺を覚えた。全ては来栖季雄がしたことなのに、なぜか椎名佳樹に申し訳ない気持ちでいっぱいになり、小さな声で呼びかけた。「佳樹兄。」
椎名佳樹は鈴木和香の声を聞くと、一瞬足を止めかけたが、そのまま彼女の傍を通り過ぎていった。
鈴木和香は思わず振り返り、椎名佳樹を追いかけて袖を掴んだ。「佳樹兄、そんなに怒らないで……」