来栖季雄は助手の言葉を無視した。
助手は続けて言った。「社長、こんなに長くお付き合いしていますが、こんなにロマンチックな一面があるとは知りませんでした!」
来栖季雄はようやく顔を上げ、周りの景色を見渡した。おそらく自分の緊張を和らげたかったのだろう。深く息を吸い、穏やかな声で言った。「和香にだけロマンチックなんだ。」
「社長、和香様がいらっしゃったら、どうなさるおつもりですか?」
「まず午後の態度について謝罪して、それからこのボイスレコーダーを取り出して、聞かせるんだ...」来栖季雄は言いながら、ポケットからボイスレコーダーを取り出し、手の届く場所のテーブルに置いた。そして頭の中で手順を確認しているようで、緊張が少し和らぎ、口調もずっと落ち着いて滑らかになった。「和香はこの録音を聞いたら、きっと悲しむだろう。長年尊敬してきた目上の人が、こんなことをしていたなんて思ってもみなかっただろうからね。だから慰めてあげないといけない。」